デジタルマップとGPSを武器にレイラインハンティング

 難しいことを言わなくても、そこにいるだけで、なんとなく落ち着く場所があったり、逆に、何故か気分が落ち着かず、そこには長くいたくないと思える場所に出くわした経験が、誰しもあるはずだ。そんな感覚が、レイラインを生み出した源のような気がする。

 元来、人には、土地に秘められた「雰囲気」を感知する力が備わっているのではないだろうか。太古の人たちは、現代人が忘れてしまっている大地と共感する方法を知っており、それを我々が電子機器を当たり前のように使っているように、ごく普通の感覚として使っていた。そして、彼らは、大地から受ける力がとくに強い場所を聖別し、ランドマークを印した。それが聖地ではないだろうか。そして、個々の「聖地」が持つ力を増幅したり、うまくコントロールするための大掛かりな装置がレイラインかもしれない。そんなふうに言うと、オカルトじみて感じるかもしれないが、レイラインがそこに存在する以上、そこには、何かがあるのだと思ったほうが自然だろう。

 かねてから、ぼくは、日本にあるレイラインを探し出し、実際にそこを訪れる旅がしたいと考えていた。地図上でいろいろな聖地を結んでみるだけでも、とても想像力を掻き立てられる。いったい、いつ、だれが、どんな目的で、このように聖地を配置したのだろうか? 彼らは、何を考え、どんな生活を送っていたのだろうか? そして、どんなドラマがレイラインの上で生み出されてきたのだろうか?

 日本のレイラインは、その多くが神社仏閣を結ぶ形になっている。神社は、登る朝日や沈む夕陽、あるいは山や川といった自然の事物を御神体としているところが多く、また、記紀神話に基づいた祭神が祀られているにしても、祭神は、自然の事物を象徴しているものだから、やはり自然そのものと考えていいだろう。

 神社仏閣巡りなどというと、古臭い年寄り趣味に思われるかもしれない。ところが、そこに、我々、現代人が忘れてしまった、あるいは見落としている、ある深い意味が秘められているとしたらどうだろう。そして、それを探り、太古の人々が感じたものと同じ感覚を味わってみるのが目的としたら。それは、物見遊山や観光とはまったく違う、今までにない体験をもたらしてくれそうに思えるのは、ぼくだけだろうか。

 今回、レイラインハンティングを実際に行うにあたって、僕は、デジタルマップGPSという最新のテクノロジーを駆使することにした。

 デジタルマップは、現在のところ昭文社がリリースしている「スーパーマップルデジタル2」を使用している。これには、全国版の広域図と各エリアの中域図、詳細図があるが、すべてをPCにインストールして使用している。デジタルマップは、広域図から詳細図までシームレスに使用できるので、スケールを自在に変えたり、必要な情報を表示させたりして、イメージした通りの作業ができる。これが、紙の地図を使ってやるとなると、縮尺の異なる地図を何枚も用意したり、線を伸ばすために貼り合わせたり、たいへんな作業になる。しかも、何度も線を引きなおしたりしているうちに、汚れたり破れたりしてしまう。デジタルマップでは、そういった煩わしさが一切ない。

 具体的な使い方は、まずデジタルマップを使って、関連ありそうな聖地を線で結び、その方位やラインの長さ、形を検証する。このマップは、正確な座標情報も含まれているので、予備調査の段階でかなり厳密に検証できるのが強みだ。広域図で比較的大きな神社や遺跡を結ぶスケールの大きなラインを引いたら、今度は、中域図を使って、村の鎮守レベルの社や小さな遺跡をピックアップして、有意性のありそうなラインを引いて行く。そして、かなり意味が深そうに思えるものに関しては、詳細図を用いて、より厳密にポイントをプロットしていく。すると、非常に精密なラインが引ける。
 

 

■広域図
デジタルマップは、広域図から中域図、そして詳細図と書き込んだ情報をシームレスに使えるので、イメージが定めやすい。

しかも、近距離を結ぶ場合は、非常に正確なデータをはじき出す。遠隔地を結ぶ場合は、地球球面の収差があるから、直線を引いても、開曲線となる。

しかし、そのラインも参考にするには十分で、ピンポイントの一に関しては座標が出ているから、計算で開曲線を修正することができる。

面白いのは、中域図や詳細図でランダムに結んでいったものを広域図で俯瞰してみると、それまで気づかなかった形や関連が見えてくることだ。

■中域図

■詳細図



右側がGARMIN社製の「e-trex」
デジタルマップと組み合わせて使用するGPSは、片手にすっぽり収まるほどの小型のもの(因みに、機種はGARMINの「e-trex」というモデルを日本語化したもの)。徒歩で移動する際にも邪魔にならない。このGPSにデジタルマップで拾った位置情報をあらかじめインプットしておき、現地までのナビゲーションとともに、現地でのより細かい方位と距離測定に利用する。いずれは、デジタルマップのデータを全てインストールしたノートパソコンとGPSを連動させる予定だが、現在のシステムでも十分に実用的だ





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