レイラインハンティングの装備と基礎知識

 ここでは、レイラインハンティングに使用する装備と、知っておくと便利な知識を紹介しよう。レイラインハンティングの方法は、各種の資料を参照し、デジタルマップを使って行う「シミュレーション」と「フィールドワーク」に大別できる。

 机上で推論し、デジタルマップに目標ポイントをプロットしていくシミュレーションはいわば「知的ゲーム」、フィールドワークは文字通り現場に出かけ、GPSやコンパスなどのツールを駆使して、シミュレーションでは見つからなかったポイントや土地との関連性を探し出し、レイラインの雰囲気を身体で味わう文字通りの「体感ゲーム」

 この二つの要素はそれぞれ刺激に満ちたゲームだが、それが合わされたとき、さらにエキサイティングな発見をもたらしてくれる。それが「レイラインハンティング」だ。

 

 シミュレーション

デジタルマップ
 デジタルマップは、めぼしい聖地や遺跡、マウンドなどを結んでレイラインを探し出すためのもっとも強力な武器となるツールだ。従来の紙の地図では、ピンポイントで経緯度を確定するのは難しく、また、直線を引いても、本来球面である地球を平面に置き換えた地図は正方形ではなく、北が狭く南が広いいびつな台形となり、複数の地図をまたぐような直線を引いたときに誤差を生じることになる。

 デジタルマップでは、離れたポイントを結ぶ際にも、地図の切れ目がないため容易にラインを引くことができ、球体を平面に変換した際の誤差を修正するGRS80という規格が摘要されているため、二点間の距離と方位を正確に計算することができる

 現在はPCローカルで使用するために、昭文社の「スーパーマップルデジタル2」をハードディスクにインストールして使用している。これは広域から詳細図まで全てインストールすると3GBあるので、容量に余裕のあるデスクトップ機に入れて、ポイントの注釈なども入れてデータベースとしている。

 ちなみにフィールドワークで使用するGPS「GARMIN eTrex Vista」にデータを転送するときには、「カシミール3D」、「GARMAP」といったフリーソフトを利用している。これらは、GPSとの間でウェイポイント、ルート、トラックなどのデータが直接やりとりできて、GPSのメモリに蓄積されたトラックデータをそのま地図に描画するなど、フリーソフトでありながら非常に使いやすくなっている。スーパーマップル2から直接GPSにプールしたデータを転送できればいいのだが、残念ながらまだサポートされていない。

 理想を言えば、取材の現場に詳細地図までインストールしたハンディPCを持ち込み、その場でGPSデータを転送できるシステムだが、今のところそのニーズにかなったデジタルマップがないのが実情だ。WEBで提供されるデジタルマップもあるが、これは、通信環境のほうが問題。PHSでは、山中のポイントからアクセスできず、i‐modeでは転送スピードが遅すぎて使いものにならない。

 

[追記]
 2004年現在、Super Mapple Digitalはver.4となっている。日本が採用する測地系がTokyo測地系から世界測地系に変更されたのにともない、デフォルトの測地系が世界測地系に変更され、さらに表示される地図はベクトルマップとなって、描画も非常に早く、使いやすく進化している。

 また、GARMINからはeTrex Vista-J、Legend-J、GPS_V-Jとデータが同期可能で、PC上で編集したデータを転送して使用できるマップソースが各種発売されている。

シミュレーションの際のいちばんの武器はデジタルマップ。現在、昭文社の「スーパーマップルデジタル2」を使用している。広域図、中域図、詳細図とシームレスに表示を変えられるので、イメージがつかみやすい

フリーソフトながら、GPSとのデータ共有や国土地理院の数値地図データなども取り込める「カシミール3D」。3Dとあるように、等高線データを持つ地図と連動して、トラックを立体的に表示することも可能

関連記事
 「デジタルマップとGPSを武器にレイラインハンティング
■昭文社スーパーマップルデジタル2
 http://www.mapple.net/smd/index.html
■カシミール3D
 http://www.kashmir3d.com/

 

資料
 日本のレイライン探索でもっとも重要な資料といえば、太古のアニミズム思想を体系化している神話や伝説。巨石信仰や山岳信仰に代表される自然信仰は、宗教以前のプリミティヴな信仰形態として、太古に世界を覆い尽くしていた。ケルトの遺跡を結ぶラインやフェアリーパス(妖精の通り道)、ピラミッドの配置、アボリジナルの「ソングライン」など、いずれも大地に秘められた「何か」を信仰対象として形作られているという点で共通している。その意味で、日本のレイラインを調べる際には、海外の事例や神話、伝説も参考になる。

 日本の聖地、とくに古い歴史を持つ神社では、記紀神話に描かれた「天孫降臨」や「天岩戸隠れ」、「国譲り神話」などがそのまま体現された構造をその場に発見して驚くことも度々ある。

 資料としては、その他に、考古学や民俗学、宗教学の研究資料も参考になる。考古学資料は、とくに先にあげたような全世界的な自然信仰と共通する縄文時代に関する研究資料。民俗学では、全国各地の伝説を槐集した柳田国男や折口信夫とそれに連なる研究。宗教学では、自然信仰に焦点を当てた修験道や陰陽道の研究とともに、ポストモダンの洗礼を受けて以降の教条主義から脱した神道研究、密教研究などが参考になる。

 

その他
 最近では、学術的な研究成果がWEB上でも公開されるようになった。おかげで、様々な情報をWEBサイトから集め、取材の参考資料として活用している。レイラインそのものを暑かったサイトは、日本には今のところ本サイト以外はないが、本家ともいえるイギリスでは、「LEYHUNTER」という長い歴史を持つ雑誌のオフィシャルサイトもある。イギリス近内はもとより、欧米各国、南米、アフリカなどの調査レポートも掲載されていて、参考になる。また、「leyline」で検索してみると、英語圏のサイトがたくさんヒットする。それだけ、レイラインハンティングが欧米でポピュラーであることを物語っている。

■The Ley Hunter
 http://www.leyhunter.com/

 

 フィールドワーク

GPS
 現代のレイラインハンティングは、シミュレーションではデジタルマップが主役。そして、現場ではGPSが活躍する。GPS(Global Positioning System)は、アメリカ国防省が開発した衛星による測地システムで、当初は民生用にはスクランブルがかけられていて、数十mから100m程度の誤差があった。だが、2000年5月にスクランブルが解除され、誤差数mの単位にまで精度が向上。これが追い風となって、さらにハンディGPSが普及した。

 レイラインハンティングでは、デジタルマップ上で拾った目標ポイントの位置座標をGPSに転送し、フィールドワークでは、まず現場で正確にポイントの座標を計りなおすと同時に、次のポイントとの位置関係をその場で検証する。さらに、次のポイントまでのルートナビゲーションを行う。

 AポイントからBポイントまで、なるべくGPSが指し示す直線ルートから外れないように辿っていくと、デジタルマップには記載のない新たなポイントを発見することも多い。たとえば、夏至の太陽が結ぶ伊勢と元伊勢を辿っていくと、旧伊勢街道や旧周山街道がこのラインの上に位置して、ある部分ではぴったりと一致する直線を成していることを発見するというようなこともあった。Aポイントを出発してBポイントに向かう途中で、GPSが指し示す矢印がまっすぐ前方を指し、道がまさにその方向にまっすぐ伸びている......それは、レイラインの存在を知っていた太古の人たちの叡智とまさに交感しているような一瞬だ。それも、GPSがなければ、ただ地勢的に直線路ができただけだろうと、何の感動も味わえずに通り過ぎてしまうところだろう。

 GPSは、長い間GARMINのベストセラーハンディGPS「eTrex」を使用してきた。これは、重量150gで片手にすっぽり収まるサイズで、邪魔にならず使いやすい。目標ポイントまでのナビゲーションはもちろん、トラック(軌跡)が記憶できるので、後でデジタルマップにトラックデータを転送して、自分が辿った行程を確認することができる。今までは、このeTrexと後述のコンパスとマップを組み合わせて使用してきた。

 今年、オペレーションを日本語化し、20万分の1の全国地図を内臓し、2万5千分の1の詳細地図をマップソースからインストールできる「eTrex legend 日本版」と「eTrex Vista 日本版」がリリースされた。今まで使っていたベーシックなeTrexからそのVistaにスイッチして、使用している。これは、停止していても方位が測れる電子コンパスと気圧高度計を内臓している。また、日の出日の入りや潮の干満を表示する機能も備えている。

 レイラインを構成するポイントまでは、あらかじめ、その場所をプロットしたVistaをオートバイのハンドルや車のダッシュボードにマウントして、カーナビのように使い、現場では、これを手に持って、ポイント間の方向や距離をチェックする。

 GPSはレイラインハンティングでは欠かせないツールだが、このVista日本語版の登場で、これまでにも増して、機動力のある取材が可能になった。

左の黄色いモデルがeTrexのベーシックタイプ。値段も手ごろで、GPSの入門機種として最適。右がVista。詳細日本地図がインストール可能になったほか、電子コンパスも内臓。前面にあるクリックスティックでオペレーションもしやすくなった

写真は、Vistaの電子コンパス機能を表示したところ。右のコンパスと比較すると、磁北偏差が補正されていることがわかる。コンパスを用いる場合、緯度による磁気偏角を計算に入れて、方角を見定めなければ鳴らない(東京だと、偏角は6°程度)。GPSは一目瞭然に真北を指すので、登山のルートファインディングなどでも非常に有効だ

■関連記事
 「eTrex Vista ファーストインプレッション」
 「デジタルマップとGPS(TOURING WAVE コラム)

■OBT-Select
 http://www.ley-line.net/obtselect/index.html

 

コンパス
 電子コンパス内臓のVistaを使い始める前は登山やオリエンテーリング用としてもっともポピュラーなSILVA製のコンパスを使用していた(上のGPSとの比較写真参照)。スウェーデン製のこのコンパスはコンパスの代名詞ともいえる信頼性の高い製品で、ベーシックなモデルは、スケール付きのベースに細かい方位目盛りが刻まれた可動リング付きコンパスがセットになっていて、直接、地図の上に載せ、正確に方位が測れるようになっている。

 GPSの項でも紹介したように、普通のコンパスを使用する場合、磁気偏角を計算に入れ、それを修正してやらなければならない。アウトドアでのルートファインディングの技術としては当たり前のものだが、どうしても、磁針の向きが目標地点を指していないと実感が薄くなってしまう。何より、目標地点が視認できない場合、近くにあるランドマークを目安にして目標地点への方位を探るわけだが、磁気偏角の修正に加えて、その作業をするには、かなりコンパスの扱いに慣れていないと難しい。

 Vistaを使用するようになってからも予備としてSILVAコンパスも持参しているが、もう、まったく登場の機会はなくなった。

 

地図

ビノキュラー・モノキュラー

その他

 


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