聖地学講座

 2012年7月から開始したメールマガジンです。

 レイラインハンティングを通じて、様々な聖地を訪ねて感じたのは、聖地のネットワークであるレイラインを考察すると同時に、個々の聖地そのものの成り立ちや意味を考えなければ、マクロなスケールのネットワークの意味も解けないということでした。

 この「聖地学講座」では、聖地の成り立ちとその意味や性質を考察するとともに、フィールドワークで得られた知見をいち早くご紹介しています。

 ☆レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」☆

■バックナンバー■

◆vol.32 2013年10月17日号
 1.遍路・巡礼の意味
  遍路とは
  四国遍路とその他の巡礼路
  伊豆辺路の再発見

◆vol.31 2013年10月3日号
 1.伊勢神宮と出雲大社の方位観
  出雲大社の遷宮
  古代の俯瞰的な視点
  伊勢神宮の方位観
  出雲大社の方位観

◆vol.30 2013年9月19日号
 1.聖地の多面性
  聖地は「心地良い」場所なのか?
  聖地の多面性

◆vol.29 2013年9月5日号
  旅の途上から

◆vol.28 2013年8月15日号
 1.水銀と聖地
  水銀の意味
  水銀と聖地
  不老不死への執着

◆vol.27 2013年8月1日号
 1.人間の可能性について
  ロジックを越えた何か
  体感の重要性

◆vol.26 2013年7月18日号
 1.鉄道とレイライン
  白濱神社に守護される伊豆急
  小田急直線路
  日光と江戸を結ぶ龍脈に沿った東武鉄道
  五島、利光、根津を結びつけた「大東急」

◆vol.25 2013年7月4日号
 1.火山を崇める聖地
  火山信仰と石
  火山を仰ぐ神社や地蔵

◆vol.24 2013年6月20日号
 1.夏至のレイライン
  ヨーロッパの夏至祭
  日本の夏至ライン

◆vol.23 2013年6月6日号
 1.伊豆半島の聖地
  伊豆山と富士山を結ぶもの
  来宮=木宮=紀宮
  伊豆の太陽信仰

◆vol.22 2013年5月16日号
 1.ユーラシアの未知なる聖地
  遊牧騎馬民族の舞台
  ステップルートの遺跡群
  世界最初の文明が生まれた場所

◆vol.21 2013年5月2日号
 1.心の中の「シャンバラ=聖地」へと至る道
  シャンバラ幻想
  ホーニヒベルガー博士の秘密
  禅の境地

◆vol.20 2013年4月18日号
 1.鎌倉の結界
  鶴岡八幡宮
  鎌倉守護の御霊
  鎌倉宮創建の意図
 2.コラム
  「加賀様の隠し路」

◆vol.19 2013年4月4日号
 1.伊豆東海岸フィールドワーク その2
  河津来宮神社
  下田白濱神社
 2.コラム
   「鎌倉フィールドワーク」

◆vol.18 2013年3月21日号
 1.伊豆東海岸フィールドワーク その1
  伊豆の国焼神話
  地質学的側面
  八幡宮来宮神社

◆vol.17 2013年3月7日号
 1.若狭お水送りと不老不死伝説再考
  お水送りという儀式
  お水送り・お水取りにまつわる人物
 2.コラム
  「神無月は醸成月」

◆vol.16 2013年2月21日号
 1.聖地の見つけ方 その2 「明日香フィールドワーク」
  王家の谷
  石舞台と酒船石
  明日香・吉野レイライン

◆vol.15 2013年2月7日号
 1.聖地の見つけ方 その1
  聖地を見つけるためのツール
  シミュレーション

◆vol.14 2013年1月17日号
 1.聖地に呼ばれるために
  聖なる空間の発見
  啓示
  人体と大地の照応
 2.コラム
  「縄文クラブ」

◆vol.13 2013年1月3日号
 1.2013年のテーマなど
  チベット仏教の聖地ラダックへ
  明日香に呼ばれる
  TVシリーズ『LOST』の聖地

◆vol.12 2012年12月20日号
 1.冬至と太陽信仰
  キリストは本当にクリスマスに生まれたのか?
  ユール(北欧の冬至祭)に見られる太陽信仰
  朔旦冬至と星供(星まつり)
 2.コラム
  「まもなく人類は滅ぶ? マヤ暦について」

◆vol.11 2012年12月6日号
 1.伊勢神宮・天照大御神とは何か
  天照大御神は祟り神
  天照大御神は持統天皇?
  藤原=中臣の素性
 2.コラム
  「百聞は一見にしかず」

◆vol.10 2012年11月15日号
 1.この世とあの世を結ぶ場所 3
  身近にある冥界への入口
  祖母の夢
  日本人の死生観
  異界へと通じる寺社
 2.コラム
  「神道とイスラム--偶像崇拝否定の二つの方向」

◆vol.09 2012年11月01日号
 1.この世とあの世を結ぶ場所 2
  蛇の信仰
  ギルガメシュ叙事詩に現れる冥界への入り口
  あの世とこの世を結ぶ「蛇」
  蛇を祀る聖地
 2.コラム
   「ダウジングで発見された温泉」

◆vol.08 2012年10月18日号
 1.この世とあの世を結ぶ場所
  柱に秘められた意味
  巨岩と黄泉の国
  標山と神社
  柱を中心にした儀式
  柱から見た天津神と国津神の違い
 2.コラム
   「死が身近にある??」

◆vol.07 2012年10月4日号
 1.磁場、活断層と聖地
  活断層に沿って並ぶ温泉
  磁気異常
 2.コラム
   「駒ヶ根の火祭り」

◆vol.06 2012年9月20日号
 1.聖地とシャーマン その3
  泰澄とその系譜
  土地鎮めの痕跡
  十一面観音と神仏習合
 2.コラム
   「夏風邪をひきました」

◆vol.05  2012年9月6日号
 1.聖地とシャーマン その2
 2.コラム
   「空飛ぶ虚ろ舟」

◆vol.04  2012年8月16日号
 1.聖地とシャーマン
  魔術的思考と先端科学
  聖地を感じるシャーマンの資質
 2.コラム
  「金峯山寺友の会」

◆vol.03  2012年8月2日号
 1.聖地の歴史
  化石人類から円空へと続くゲニウス・ロキの表象
  自然聖地としての洞窟から人工聖地の巨石文化へ
 2.コラム
  「聖地を活かした町興し」

◆vol.02  2012年7月19日号
 1.聖地に漂う「雰囲気」
  ゲニウス・ロキと第一行
  女神の聖地・花の窟
  女神の聖地・斎場御嶽と久高島
  熊野と琉球との繋がり
 2.コラム
  「シンクロニシティ」

◆vol.01  2012年7月5日号
 1.聖地とは何か
  特定の自然条件において成立した聖地
  人為的条件によって成立した聖地
 2.コラム
  「風水とレイライン」
 3.お知らせ
  『祈りの風景』まもなく刊行

 

◆vol.00 サンプル号

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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」

                vol.00
サンプル号

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◆今週のメニュー

1 はじめに
2 聖地学講座概要
3 フィールドレポート
   「江の島に行って来ました」

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はじめに

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「この世界には、人に様々な影響を及ぼす場所がある」
私が、聖地を巡りはじめるきっかけとなったのは、そんなインスピレーションが発端でした。

そこにいるだけで力が湧き、明るい気分になれる。逆にそこでは力を吸い取られてしまうようで、気分が暗くなってしまう。しかもそれが自分だけではなく誰にでも同じような影響を与えている。若いころの登山経験から、そんな出来事を何度も味わい、さらにそんな場所が「聖地」とされていることに気づきました。

では、他の場所とは異なる特別な性質を持った「聖地」とは、いったい何なのか、どのようにして出来上がっているのか。それを知るために、実地で聖地を巡り、様々な情報を求める旅がはじまりました。

そして、15年間、このテーマに取り組み、その成果をまとめたのが『レイラインハンティング』というサイトと、『レイラインハンター』(アールズ出版)でした。

レイラインとは、聖地と聖地を結ぶ直線、あるいは五芒星や星座を象って聖地が配置されている現象です。じつは、聖地は単体で独立してあるよりも、他の聖地とネットワークを築いているケースのほうがポピュラーです。そこには、神話がバックボーンとしてあったり、あるいは風水の考え方をもとにした結界という意味があったりします。

古くはシャーマンが、中世ではユダヤやイスラムの神秘主義者たちや、日本では陰陽師たちが、そして、近世から現代にかけてはそれら古い伝統を受け継いできた謎めいた集団が、レイラインを構成するために古い聖地を復活させたり、新たに聖地を造り出してきました。

レイラインを突き詰めていくと、再び「聖地とは何か」という謎が立ち現れてきます。そして、レイラインを構成した職能集団ともいうべき人間たちが、今では廃れてしまったか、あるいは秘匿された叡智を使って、聖地を見分け、それを活用してきたことが見えてきます。

彼らは、レイラインを形作る中で、様々な目印を残し、長く伝えられてきた神話の中に聖地の性質を示す記号などを織り込んできました。『レイラインハンティング』や『レイラインハンター』では、レイラインの実例を示し、それを辿りながら、謎を実際に追っていくことの面白さを伝えてきました。

これから始まる『聖地学講座』では、レイラインや聖地を辿る紀行ではなく、聖地の成り立ちから、聖地が人に及ぼす影響を様々な観点から考察し、最終的には、聖地を作り出すための実践論にまで辿り着きたいと思っています。

また、各回の後半では、旬なフィールドワークの成果を紹介していきたいと思っています。公開のサイトや著作では表現しにくい裏話や具体的な地名、座標なども明確にしていきますので、こちらにもご期待ください。

まだ各論全ての展開が確定しているわけではありませんが、これから展開していく講座の概要を上げておきます。

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聖地学講座概要

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●聖地とは何か
  ・人に影響を与える"場所"

●聖地の歴史
  ・太古の聖地と信仰
  ・様々な宗教の聖地
  ・日本の聖地の変遷
  ・都市計画における聖地の利用

●聖地の科学
  ・太陽と聖地
  ・月、天体と聖地
  ・聖地のネットワーク"レイライン"
  ・地質学的、地球物理学的検証

●聖地と人
  ・巡礼の意味
  ・聖地と修行
  ・現代の聖地

●聖地を巡るフィールドワーク
  ・GPS、デジタルマップの活用法
  ・地磁気、ガイガーカウンターなどの各種センサー
  ・神話や古地図との符号を追う

●聖地の作り方
  ・物語の創造
  ・ネットの活用
  ・"聖なるもの"の配置

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フィールドレポート
「江の島に行って来ました」

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昨年、FMヨコハマが発行するフリーペーパー"ステーション・ブレイク"のパワースポット特集に協力しましたが、その記事が、昨年の読者投稿で一位となり、今年はさらに突っ込んだ内容をとのリクエストに答えて、ご当地神奈川の聖地である江の島に行って来ました。

江の島は、厳島神社、琵琶湖の竹生島と並んで、「日本三大弁天」の一つに数えられています。また、九州の宗像神社の分社でもあり、厳島神社とは宗像神社の分社繋がりでもあります。

9月の朝日カルチャーセンター湘南教室の講座では、「活断層と聖地」のテーマで、やはり教室のある神奈川県の活断層と聖地の関係を紹介し、江の島をフィールドワークの場所とするので、その下見と取材も兼ねたものでした。

江の島は二つの山が合わさったような形をしていて、それぞれの頂に江島神社の辺津宮と奥津宮が鎮座し、辺津宮の南には中津宮が鎮座しています。これは宗像大社と同じで、それぞれに三柱の女神を祭っています。

元々は、奥津宮の東には、海岸侵食でできた洞窟があり、そこでは、修験道の開祖である役行者をはじめ、泰澄、空海、木喰などの修験者が参篭して修行したと伝えられています。奥行きが150mあるその洞窟は、ちょうど奥津宮の下まで達していて、奥津宮は江の島の中心から、その力を吸い上げるような構造をしていることになります。

辺津宮と中津宮のある東山は、地下に断層が走り、それが藤沢の海岸のほうまで続いていることが最近の研究で明らかになりました。断層上に位置するのは、聖地の一つの特徴であり、その上に置かれた神社仏閣や教会は、地に眠る龍や魔物を沈めるために設置されるケースが多く見られます。

江の島の対岸には「龍口」という地名があり、ここには、五つの頭を持つ龍の話が伝わっています。

昔、江の島の海に五つの頭を持つ龍が住み、毎年、浜の集落に生贄を要求しました。浜の集落では村の娘を一人ずつ龍に差し出し、その怒りを収めていましたが、あるとき、江の島に弁天様が降臨し、龍はその弁天様に恋をしました。自分の恋心を伝えると、弁天様は「生贄を求めるという非道なことを止めなければ、お前の妻にはならない」と突っぱねます。

龍は、その言葉に改心し、生贄を求めることを止め、二人は夫婦になったとされます。

龍口には日蓮宗の龍口寺がありますが、ここはかつての刑場の跡で、生贄が捧げられたという話に奇妙に符合します。また、龍口は岬のようになった丘があり、それが龍の口の形に似ていることから名付けられたとされますが、その口は、ちょうど江の島の方向を向いて開いています。

龍口寺の山門には、非常に凝った絵解き物語の彫刻があり、ここにはまた違った物語が記され、不思議なことに西洋式の羽を持つ龍が彫り込まれています。この物語については、また、別の機会で詳しく紹介してみたいと思います。

さて、江の島に話を戻しますと、ここで面白いのは奥津宮と中津宮が同じ北緯35°17′57″という緯度に配置されていることです。さらに中津宮の本殿は東を向いています。これは、春分と秋分の日に、中津宮本殿に真っ直ぐ朝日が差し込み、奥津宮と結ばれるという配置です。また夕陽は逆に奥津宮から中津宮に向かって貫く形となります。

春分の日と秋分の日の太陽が結ぶ聖地は、通称"御来光の道"と呼ばれる房総半島の上総一ノ宮玉前神社から寒川神社、富士山、七面山、琵琶湖竹生島、大山と通って出雲大社まで達する直線があり、ここには他にも無数の聖地が配置されています。同じ緯度に配置されて春分と秋分の太陽が聖地を取り結ぶというのは、世界的にみられる古代からのマジカルな配置ですが、江の島にも同じ配置があるというのは、江の島の中で特別な結界が張られていることを意味しています。

そのことを江島神社の宮司さんにじかに質問してみましたが、「そのような配置になっているなんて、まったく知りませんでした」とはぐらかされてしまいました。

そのかわり、「江の島ではないけれど、やはり私が管理している神社で、最近、気功師のあいだで、パワースポットと噂されているところがあるんですよ」と、興味深い話をしてくれた。

それは、龍口寺の背後、閑静な住宅街が広がる目白山の中腹にある上諏訪神社(N35°19′04° E139°29′19″)でした。

長い階段を上り詰めて、背後を見ると、片瀬江ノ島の街並みの向こうに江の島か遠望でき、ちょうど江島神社の奥津宮のシンボルともなっている竜宮城の入り口のような山門が、ぴったり長い階段の参道の延長上に位置していました。

同行したFMヨコハマのDJ鈴木まひるさんは、「ここの空気は、とっても澄んでいて気持ちがいい。そして、なんだか手の平がピリピリして、力を感じます」とこの聖地の雰囲気にすっかり当てられた様子でした。

ぼく自身は、特別な感覚はありませんでしたが、試しに周辺で磁場(磁束密度)を測ってみると、上諏訪神社を中心として丘の大半が42μT(マイクロテスラ)で、ぴったり安定していました。地下に大きな岩盤があって、それが磁界を安定させているのかもしれません。
花崗岩盤などがあると、圧電効果や水晶発振効果によって、人はとてもリラックスした、気持ちのいい状態になります。……その詳しい仕組みは、また各論のほうで。

江の島探索は、収穫の多い、面白い取材となりました。FMヨコハマが神奈川県内で配布している"ステーション・ブレイク"には、詳しいレポートが載っていますので、手に入る方は、そちらもぜひごらんください。また、FMヨコハマのサイトでは、PDF版も公開するようです。

では、また。

次回は、各論1の『聖地とは何か』をお送りします。

どうぞ、おたのしみに!

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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」

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■ お問い合わせ ley@ley-line,net

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