能登・イルカ伝説と陰陽道 vol01―イルカ呼びのシャーマン―

 

  イルカ呼びのシャーマン

 ライアル・ワトソンの著作の中に、南太平洋の島に住むイルカを呼び寄せるシャーマンの話が出てくる。村人の依頼を受けて、このシャーマンが海に向かって祈ると、沖からイルカの大群が岸に向かって押し寄せてくる。村人たちは、総出で、海に入り、イルカを迎え、これを抱きかかえるようにして岸に上げる。そして、イルカをありがたくいただく。 

 キリバスのある島に伝わる話では、イルカを呼び寄せるシャーマンは自分の体から魂だけ抜け出して、海底にあるイルカの国へ旅をする。そこで、イルカの王に会い、歓待される。そのお返しに、イルカたちを、自分の島へ来るように薦める。そして、シャーマンの魂はイルカたちを連れて島へと戻ってくるとされている。おそらくワトソンは、その島か、同じような伝承を持つ島に取材したのだろう。

 そんなイルカと人間との魂の交感ともいえるエピソードに出会ったとき、ぼくは、すぐにアイヌの熊送り「イヨマンテ」を思い浮かべた。アイヌは、熊狩りの際に、親熊を失った小熊を連れて帰り、それを村の宝として、ときには直接母乳を与えて大事に育てる。

 その熊が大きく成長したとき、村の真中に大きな祭壇を設け、そこで大切に育ててきた熊を屠って、熊の神の元へ送る。たいそうな捧げものとともに、熊の神の元に送られた村の熊は、村人たちの願いを自らの神に伝え。それによって、村には、さらなる獲物がもたらされる。

 アイヌでは、シャーマンが脱魂してあの世に行くのではなく、シャーマンの魂の代わりに、自分たちの意志を伝えるメッセンジャーとして熊の魂を送るわけだが、その魂が、多くの獲物を引き連れて戻ってくるという構図はキリバスの例と同じだ。

 南太平洋の果てと北の大地の民族のこの共通点は、太古の民族、彼らのプリミティヴな感性が通じ合っていた証拠ではないかという気がした。

 そして、日本にも、イルカを呼び寄せるシャーマンがいたという確信が同時に芽生えた。

 はじめて、ワトソンが記したエピソードに出会ってから10年以上が経って、ぼくは、ついに能登で、イルカを呼ぶシャーマンと出会うことになる。そして、そこには、「イルカライン」と呼べるようなレイラインが存在していた。

 

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