2002.03.16 不動尊

 前に「ロード・オブ・ザ・リング」の映画を楽しみにしていると書きました。日本でも公開になり、久しぶりにロードショーを観ようと出かけていきました。都心の映画館は混んでいそうなので、立川へ。ところが、平日の昼どきにもかかわらず満席。3時間にも及ぶ映画を立ち見するのも辛いので、今回は見送ることにしました。

 書店を覗くと、原作の「指輪物語」が平積みで、飛ぶように売れているし、どうやらブームになっているようです。それにしても、発表されてから40年以上、ファンタジーの古典として熱心なファンに読み継がれてきたこの物語が、流行のファッションのように扱われてしまうと、どこか虚しい気がします。映画は、ブームが一段落してから、空いた劇場でゆったりと鑑賞することにしました。

 映画に肩透かしを食ってしまって、思わぬ時間が空いてしまったので、多摩都市モノレールに乗って高幡不動へ。じつは、朝、家を出るときに、映画を観ようか、江戸五色不動を巡ろうかと思案していたのです。江戸五色不動とは、目黒、目赤、目白、目青、目黄の五つの不動尊で、江戸の町を綿密な風水に基づいて設計した天海僧正が、江戸城のまわりを囲むように配置したものです。昨日からスタートした「レイラインハンティング」の「江戸=東京特集」で取り上げるつもりで、その取材を兼ねて行こうかと思ったわけです。結局、映画を選んだわけですが、それが肩透かしに終わって、さてどうしようかと思案。最近開通した多摩都市モノレールの路線図を見たら、高幡不動が目についたというわけです。

 高幡不動の駅から始まる100mほどの参道を抜けると、堂々とした門の向こうに五重塔が聳えています。到着したのが15時。ちょうど定時の勤行の時間で、境内に粛々としながらも深く染みこんでくるような経の音が響き渡っています。1000年ぶり修復された不動明王は上野の国立博物館に展示されているとのことで拝めませんでしたが、経の音とうららかな春の日差しに包まれて静かな境内に佇んでいると、そのまま涅槃に引き込まれていきそうな気がしてきます。

 数日前、打ち合わせの帰りに青山通りを歩いていると、ふいに起こった突風に危うく吹き飛ばされそうになりました。そこはある商社の本社ビルの横で、軽い春風がビルの側面を抜けるときに凝縮されたビル風になったのでした。環境への配慮や自然との共生をはかるテクノロジーが導入されつつあっても、現代都市は自然から疎外された存在であることに変わりありません。それに比べると、こうした古刹では、単に建物だけでなく、そこにある人間の感性を自然に同化させて、さらに、自然の中に秘められたスーパーネイチャーまでを感得させようという繊細な工学がバックボーンにあるような気がします。

 レイラインハンティングでは、そんな「聖地」に秘められた工学も見つけ出していきたいと思っています。明日は、手元にBMW1150GSというタフなデュアルパーパスツーリングバイクが届きます。まず、手始めに、こいつで江戸五色不動を巡ってみようと思っています。

OUTDOOR BASIC TECHNIC コラムより転載)

 

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