2002.03.22 春分の日


 春分の日の昨日、午前3時半にオートバイで東京を出発し、外房の上総一ノ宮にある玉前神社で日の出を迎えました。この日、玉前神社が面する太平洋から昇った太陽の光は、寒川神社、富士浅間神社、富士山頂、七面山、竹生島、元伊勢、大山、出雲大社と名だたる聖地を一直線に結びます。通称「御来光の道」と呼ばれる、その基点に当たる玉前神社で御来光を拝むのが目的でした。

 今は商店街に阻まれて海から昇る朝日が参道の先に現れる様子は見られませんでしたが、東を向いた大鳥居に真っ直ぐ日が当たり、上部から徐々に輝いていく様子は、息を飲む荘厳さでした。東京を出るときに暖かかったので油断して薄着だったため、途中からくしゃみを連発しながら走っていましたが、この光景に打たれて、くしゃみも止まりました。 

 玉前神社は、海神(わだつみのかみ)の娘、玉依姫命を祭っています。姉である豊玉姫命が、夫の山幸彦に自分が本当は鰐の姿をしているのを見られたのを恥じて海の国へ戻ってきたときに、その御子神を預かり、後に御子神が長じたときにその后となります。そして、二人の間に神武天皇が生まれる。記紀神話にはそうあります。いかにも海の国というにふさわしい外房の海辺にあり、姉の子を育てて、後に仲むつまじい夫婦になる...そんな物語は、そういう人物たちが実在して、それを史実として記したというよりは、この玉前神社がある場所の雰囲気を物語として構築したもののような気がします。穏やかで、なんでも優しく受け止めてくれる自然。それを人格で現せば、玉依姫命そのものという気がします。

 緩やかに波が砂浜を洗う上総一ノ宮の海岸で一休みした後、木更津へ向けて、のんびり移動を開始しました。房総半島を横切る道は、柔らかな曲線を描く雑木林の里山が続く気持ちのいい道です。水が張られて田植えも間近な田んぼの畦には菜の花が咲いています。 

 市原へ出る頃には走っていても汗ばむほどに暖かくなってきました。高速道路には乗らず、そのまま下の道で都内へ。靖国通りを九段下まで差し掛かると、なんと、桜吹雪が舞っています。北の丸公園から千鳥が淵のあたりの桜は、今が満開。すごい人手です。後で知りましたが、都心では、まさにこの日に桜の満開宣言が出されました。平年より15日も早いとのこと。その桜も、春の嵐に、すでに撒き散らされて、これでは、週末には葉桜になってしまいそうです。 

 昼前には自宅に帰り着く、まさに小さな旅でした。

春分の日の朝日は、参道の先から昇り、玉前神社の一の鳥居と二の鳥居をまっすぐに照らす。写真は二の鳥居。この鳥居の下に一の鳥居の影が映っているのがわかる

OUTDOOR BASIC TECHNIC コラムより転載。この取材の詳細は、「御来光の道vol1.で掲載します)

 

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