2002.10.15 人間の可能性

 『アウトサイダー』や『オカルト』といった著作で有名なコリン・ウィルソンが、いわゆる超常現象や超能力といったものを題材にして、それがもたらされる原因を推論するときに、人間の脳の中に秘められた「X機能」というものを想定している。

 かつて、他の動物と同じように本能に従って荒野を生き抜いていた人間が使っていた脳の部位と現代人が使っている脳の部位が異なり、サイキックな現象の多くは、現代人が機能させていない脳の部位に関係しているのではないか。文明の発達にともなって、それまで必要とされてきた本能に関わるような脳機能が退化して、その能力が発揮できなくなっているのではないか。

 サイキックと呼ばれるような人たちは、そんな退化したはずの本能が何かの拍子に活性化されて、その能力を発揮するようになったものではないか。

 もちろん、それですべてが説明しきれるとは思わないが、あくまでも、人間の持つ能力とその可能性という観点から「超常現象」を解明しようとするコリン・ウィルソンの姿勢には共感が持てる(後に、彼は「ポルターガイスト」の中で、ポルターガイストという現象の99%は、そのトリガーとなる思春期の少年少女や感受性の強い人間の存在があって、その超心理が引き起こす現象と推定できるが、残る1%は、たとえば「霊」と呼ばれるような外在的な存在を想定しまいと説明がつかない、としている)。

 世の中で起こる不可解な現象について、客観的に分析する視点を忘れてしまうと、宇宙人が登場したり、何でもかんでも「霊」の仕業になってしまったり、「信じる者だけが救われる」というできそこないの似非宗教になってしまったりする。そんなドグマにはまってしまうと、人間の可能性を伸ばすどころか、思考することまで停止して、もはや人ではなくなってしまうだろう。

 少なくとも、自分は、安易な結論に飛びつかず、じっくりと「現象」を見据え、分析していきたいと思う。

 

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