要石(かなめいし)

 香取神宮の本殿と奥の宮の位置関係を見ると、ちょうど鹿島神宮と香取神宮を結ぶ線の延長上にあることがわかる。そして、その線のすぐ側には、 香取神宮のもう一つの御神体として知られる「要石」がある。

  要石は、鹿島神宮にもあるが、鹿島の要石は凹型で、香取の要石は凸型をしている。この二つの要石は、地下で蠢く大鯰の頭と尾を押さえ、 この地方の地震を防いでいると伝えられている。貞享元年(1664)3月、この言い伝えを確かめるために、徳川光圀が掘り起こそうとしたが、 どこまで掘っても底が現れず、ついに諦めたという逸話も残っている。

  伝説はともかくとして、要石は、たしかに不思議な雰囲気を漂わせている。苔むしたような深い緑を帯びているが、表面に苔はなく、 いつも誰かが丁寧に磨いているような光沢がある。それは、周りの石や地面と質感がまったく違い、なぜか、 奇妙に周囲の地面から遊離していて人工物めいた印象を与える。地中深く埋まっている大石の一部というよりは、得体の知れない物体が微動だにせず、 わずかに宙に浮いているといった感じだ。

  ふいに、囲いの内に入って、石の表面に触れてみたい衝動にかられた。そして、引かれるように半身を囲いの内に入れて 、要石に手を伸ばそうとしたそのとき、近くの民家で飼われている犬がけたたましく吠え出した。はっと我に返り、囲いから身を離すと、 犬は吠え立てるのを止めた。遠く江戸の昔、境内にあった神井の聖水を汚した者が、その場で悶絶して果てたという話もある。そんな逸話を思い出すと、 背筋を冷たい汗が流れ落ちた。

  要石の向かいには、これを見守るように押手神社という小さな社がある。ここは、稲荷を祭る社で、小さな狐が並んでいる。 神社の中に他の神社を祭るということはよくあることだが、香取神宮の核心部ともいえる要石を見守るように稲荷神社があるのが、なんとなく気にかかった。

独特な質感を持つ「要石」。明らかに周囲の石や地面とは違う


本殿と奥の宮がトライアングルの鹿島=香取ラインの延長上にあるのがわかる。要石は、そのラインからほんの少し外れている

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