様々な人々の思いが刻まれたフィールド

   鹿島神宮は、東国三社の中では、もっとも歴史が古いといわれている。一説には、2000年以上昔に遡るという。それを物語るように、この神宮の森は広大で、立ち並ぶ木々も巨木ばかりだ。現在の参道は、南西を向いた大鳥居から桜門を潜って最初に本殿に向かい、 さらに神門を潜って奥の宮へという順路になっているが、本来は、奥の宮の北に位置する御手洗池の側から入り、 御手洗池で禊をして奥の宮から先にお参りするのが正式だった。どうして、それが逆になったかは不明だ。

  大鳥居から入っていつも不思議に思うのは、参道の両側に並ぶ松の巨木が南向きに傾いていることだ。ここは海に近いので、 海風を受けてそうなったのかもしれないが、一様に天を突くような巨木が傾いでいる中に入ると、重力が傾いているような錯覚に陥ってしまう。 それが、次の神門を潜ると、傾いた木は少なくなるから、なおいっそう不思議だ。

 

東国三社の要的存在の鹿島神宮。広い神域を持ち、風格を感じさせる。

これは、大鳥居から、現在の参道。かつての参道は、逆で、こちらは、いわば裏参道だった。巨木が一様に南に向かって傾いでいるのが不思議だ

 

  本殿と向かい合う形で、宝物殿がある。ここには、武の神らしく、長さ271cmの直刀が収められている。これは、神武天皇が国を平定する際に力を発揮したといわれる「平国剣(ことむけのつるぎ)」を擬して、 鹿“の‘神の佩-(はいとう)として奈良時代に鍛えられたと伝えられている。鹿島神宮の祭神である武甕槌神は、高天原から天照大神の命を受け、出雲の国において国譲りを果たした武力と権威の象徴ともいえる神だ。この宝剣は、そんな武甕槌神に相応しい神器だ。

  そんな由来を持つ鹿島神宮は、武道家たちにも崇められている。そして、境内にもその碑が残る塚原卜伝が創始した鹿島新当流をはじめ、鹿島神道流、 鹿島新陰流とこの地を源流とする流派も多い。  境内は、そんな歴史を物語るように、硬派で飾らず、落ち着いた雰囲気に包まれている。それは、東国三社に共通するところだ。

  かつて、遠く九州の地で大陸からの侵略に対して海岸線の防衛に当たった防人たちは、東国から派遣されることが多かった。彼らは、 家族を故郷に残し、旅立つに当たって、この鹿島神宮を参拝した。この社のキンと引き締まった緊張感は、そんな彼らがこの場に刻んだ雰囲気でもあるのかも知れない。

  近年、レイラインやパワースポットと呼ばれる、人々の特別な信仰を集める場所についての科学的な研究も進んでいる。これまで、単なる迷信や、心霊研究や神秘主義などの戯言と片付けられ、科学的な検証をしようという動きがなかったそんな場に、やはりそこには何かがあると考えた科学者たちが、検証を始めたのだ。その結果、レイラインの多くが、奇妙に活断層と符号していることが発見、報告された。活断層の上では、電磁波の異常を示すことが多い。鳥や動物、それに電磁波に対して敏感な人間は、それを感じることができるという。

  いわゆる霊能者と呼ばれるような人の中には、活断層の上に立つと、磁気異常から不安な気持ちになる人もいるだろう。  鹿島と香取の要石は、地震を起こす大鯰を封じるために置かれたという伝説を持つ。この地は地震の多い土地だ。要石の伝説は、活断層に符号しないだろうか。

  また、聖地と呼ばれる場所は、花崗岩の岩盤に乗っていることが多い、さらには水に関係する場所も多い。花崗岩に含まれる水晶は、 外部から受けた振動を固有の振動に変換して。それを長く保持することで知られる(クォーツ時計に水晶が使われるのは、その固有の振動数が変動が極めて少ないことを利用している)。また、水が作り出す「場」も、そこで起こったことをテープレコーダーのように記録する性質があるのではないかともいわれる。

  花崗岩といえば、要石が思い当たる。水といえば息栖神社の忍潮井は日本三霊水に数えられている。さらに、この常陸の国には、巨石信仰の面影を留める筑波山という聖地がある。また、大和朝廷が平定しようとした東国、蝦夷には、やはり太古からの巨石信仰がある...。

  余談だが、Jリーグの名門チームである鹿島アントラーズの本拠地は、鹿島神宮のすぐ北にある。Jリーグが発足する際に、他のチームが日本リーグの一部リーグチームを母体としていたのに対して、鹿島アントラーズの母体チームは唯一二部リーグのチームだった。そのため、Jリーグへの加盟さえ危ぶまれ、たとえ加盟できても、他チームとの実力差は歴然としてしまうだろうと予想された。しかし、蓋を開くと、鹿島は快進撃を続け、あっというまにシリーズチャンピオンになってしまった。Jリーグへの加盟が決定してすぐ、チームは、全員で鹿島神宮に参拝した。そして、彼らは、チームの守り神として、鹿島の神の使いである鹿をチームのマスコットとしたのだ。

鹿島神宮の「要石」。
香取神宮の凸型に対して、
こちらは凹型をしている

 

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