近畿の五芒星を巡る


■淡路島・伊弉諾神社-------------------

 近畿の五芒星、それに外接する正五角形を辿っていて不思議に思えるのは、それぞれの聖地を結ぶルートが、まるでこのレイラインを意識して創られたかのように、ストレートに伸びていること。そして、それがいずれも古い街道に重なっていることだ。

 元伊勢から淡路の伊弉諾神社へは、一般道なら国道175号線を一直線に南下して、明石から渡ればいいし、高速なら舞鶴若狭道から山陽道、明石大橋を経て、最短距離で結ばれている。

 今回は高速を繋いで淡路島へ渡ったが、伊弉諾神社が近づいてくるに従って、また、初めて訪ねる土地なのに懐かしい気がする、いつもの感覚に囚われた。

 伊弉諾神社はその名の通り、国生み神話の伊弉諾神を祭っている。一通りの国生みを終えた伊弉諾神は、最初に生んだ淡路島に幽宮を建て、ここに隠れ給うたとされる。その幽宮が伊弉諾神社だ。天照大神の父親であり、日本の国のまさにルーツであるはずの伊弉諾神が祭られるこの神社は、賑わいもなく、ひっそりとしている。

 ぼくがお参りしたときも、他には、地元の人と思われる自転車に乗った不思議な老人が一人、ぼくの後を黙ってついて回ってきただけだった。

 こんなにひっそりしているのは、ここが神が息づく場所ではなくて、内にこもり休まる幽宮で、ご利益をもたらしてくれるように思えないためだろうか。

 伊弉諾神社の神門の手前には、面白いものがある。直径10mほどの日時計で、その影が指し示す位置にはめ込まれたレリーフには、各地の著名な聖地の名が掘り込まれている。夏至の日の出=諏訪神社、真北=但馬一宮出石神社、夏至の日没=出雲大社・日御碕神社、真西(春分秋分)の日没=対馬海神神社、冬至の日没=高千穂神社・天岩戸神社、真南=諭鶴羽神社・沼島(オノコロ島)、冬至の日没=熊野那智大社、真東(春分秋分)の日の出=伊勢内宮・藤原京・葛城山。まさに、伊弉諾神社がレイラインの要に位置していることを証明しているわけだ。

 普段、聖地に隠された秘密としてのレイラインをGPSやらデジタルマップやらを使って、なんとか探し出そうとしているぼくとしては、こうあからさまにされると、逆に面食らってしまう。

 この日時計は、地元のロータリークラブが、伊弉諾神社に伝わる伝承を元に、方位をきちんと検証して建てられたものだという。ぼくがGPSとデジタルマップを使ってレイライン探索を始めた当初、どうせ神話や伝承などは正確なものではないと高を括っていたら、信じられないくらい正確な配置になっていて驚愕したものだが、この日時計を建てたロータリークラブの人たちも、同じような驚きを味わったという。

 淡路島からは、いったん四国に渡り、徳島から紀伊半島の和歌山へフェリーで渡ることにする。その途中で、友人が運営している「野遊び屋」を訪ねた。

 ここでは、シーカヤックの装備一式がレンタルされ、ニュージーランドのエイベルタズマンエリアで政府公認のプロガイドとして活躍するRyu Takahashi氏をはじめ本格的なガイディングを身につけたスタッフの案内でシーカヤックが楽しめる。ぼくは、午後の半日を無人島に渡ってお茶を楽しむアフタヌーンティーツアーに予約を入れておいた。

 シーカヤックは、バイクとは逆に膝の外側で艇をホールドして安定させ、パドル操作と体重移動を組み合わせて舵をとる。バイクに乗れる人なら、ものの10分もあればコツを飲み込んで自在に操ることでがきる。かつてGS乗りとして鳴らした内田正洋氏が今ではシーカヤックの第一人者として知られる存在になっているが、バイク乗りなら、一度はシーカヤックを経験しない手はない。必ず、その自然な操作性と自由さの虜になってしまうはずだ。

 じつは、瀬戸内の島々には隠された聖地が多く、それを辿るのにはシーカヤックが最適だと、前々から思っている。今回は、ちょっとしたレクリエーションと、そんな瀬戸内レイラインツーリング?の練習を兼ねて「野遊び屋」を訪ねたが、ぼくが瀬戸内レイラインツーリングのプランを話すと、「それいいよ、うちのツアーで組むから、案内して!」なんて、大乗り気になられてしまった。まじめに、そんなツアーも考えてみたい。


関連ページ―
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